大分地方裁判所 昭和50年(ワ)295号 判決 1977年5月11日
原告
帆足一夫
被告
衛本成幸
主文
一 被告は原告に対し、金一四三万二九三六円及び内金一二三万二九三六円に対する昭和五〇年七月一六日から右支払ずみまで、年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを四分し、その三を原告の、その一を被告の負担とする。
四 この判決の第一項は、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告は原告に対し金五五八万三三四六円及び内金五二八万三三四六円に対する昭和五〇年七月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言申立
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張する事実
一 請求原因
1 交通事故の発生
(一) 事故発生日時 昭和四三年五月二二日午前七時四〇分頃
(二) 事故発生場所 大分市敷戸大分大学入口三差路内
(三) 加害車両 第二種原動機付自転車大野町B四六五号
運転者兼保有者 被告
(四) 被害車両 自転車
被害者 原告
(五) 事故の態様
原告は、前記日時、場所において自転車を運転して大分大学方面から犬飼方面に向け進行中、後続してきた被告運転の加害車両から追突され、路上に転倒されて傷害を受けた。
2 原告の負傷
原告は、本件事故により頭部外傷、右肩打撲傷、右前腕部皮下血腫、右肘擦過創、右臀部及大腿、膝部打撲傷兼擦過創、左大腿打撲傷の傷害を受け、昭和四三年五月二二日から同年八月二四日迄大分市大手町所在の医療法人芝蘭会今村病院において入院治療を受け、同年八月二五日から同年九月二八日迄同病院において通院治療を受けた。
3 和解契約
原告は、昭和四三年八月一九日被告と本件交通事故による損害賠償について左記のとおり和解契約を結んだ。
記
(一) 原告の治療費、入院費、慰藉料及び休業損害は、被告の自賠責保険で支払う。
(二) 原告に後遺症が発生した場合は、被告の責任とし、その損害を支払う。
4 後遺症の発生
原告は、その後本件交通事故による頭部外傷後遺症のため昭和四四年九月一七日、前記今村病院に通院して治療を受け、次いで同月二二日から同年一一月一日まで同病院において入院治療を受け、更に同月二日から同年一二月二七日まで同病院で通院治療を受けた。
原告は、昭和四七年頃から、足、腰の疼痛に悩まされ、同年三月八日から同年六月一七日まで一〇二日間(内実治療日数五二日)同市中島西一丁目所在の嶋津内科医院に通院し、同月一九日から同年一〇月一一日まで一一五日間入院しそれぞれ治療を受けた。これとは別に、原告は、同年六月一六日から同年九月二一日まで九八日間(内実治療日数四〇日)同市荷揚町所在の伊藤病院に通院し、同年一〇月一八日から同市三ケ田町所在の清水整形外科医院に通院して治療を受けている。ところで、右足、腰の疼痛については、本件交通事故との因果関係が判明しなかつたが、昭和四九年二月一四日自賠責保険の後遺症認定の手続において本件事故の後遺症であると認定され、その等級は自賠法施行令別表の一二級七号に該当するものとされた。
5 損害 金五八九万三三四六円
原告は、本件事故による後遺症のうち、足、腰の疼痛の後遺症について一部請求をなす。
(一) 休業損害 金一二二万七七八六円
原告は、これまで土木工事の現場主任の仕事をしてきたものであるが、本件後遺症のため、次のとおり休業せざるを得なかつた。
休業期間 昭和四七年七月一日から昭和五〇年六月三〇日まで。
賃金 月額金一七万〇八〇〇円(年収金二〇四万九六〇〇円)
賞与 年額金八七万三七〇〇円
(以上賃金、賞与は、賃金センサス昭和四八年度第四巻七表E建設業係長五五歳から五九歳までの表による。)
従つて、原告の本件後遺症による休業損害は次のとおりとなる。
(204万9600円+87万3700円)×3×14/100=122万7786円
(二) 逸失利益 金三五一万五五六〇円
原告は、本訴提起当時満五六歳の男子であるから満六七歳まで今後なお一一年間就労可能である。従つて、原告の本件後遺症による逸失利益はホフマン式計算方法により現価を算出すれば次のとおりとなる。
292万3300円×8.590×14/100=351万5560円
但し、8.590は法定利率による単利年金現価表11年の係数
(三) 慰藉料 金八五万円
本件後遺症の慰藉料は、金八五万円が相当である。
(四) 弁護士費用 金三〇万円
6 填補
原告は、本件後遺症について、自賠責保険から保険金三一万円を受領した。
7 結論
よつて、原告は被告に対し右損害額合計金五八九万三三四六円から填補を受けた金三一万円を差引いた金五五八万三三四六円及びこれから弁護士費用金三〇万円を差引いた金五二八万三三四六円に対する本件記録上明らかな被告に対する本訴状送達の翌日である昭和五〇年七月一六日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する答弁
1 請求原因第1項中、(五)の事故の態様の、被告運転の加害車が原告に追突したことは否認する。その余の事実は認める。
2 同第2項中、原告が今村病院に入院、通院したことは認めるが、入院、通院の日数、負傷の程度は不知。
3 同第3項の和解契約が締結されたことは認める。
4 同第4項、第5項の事実は不知。
5 同第6項の事実は認める。
三 抗弁
1 原告主張の和解契約は、右和解契約成立の日被告が原告の雇主の事務所に連れて行かれ、四、五人のものから取囲まれるなどして強迫された結果成立したものである。よつて、被告は、本訴訟の第一〇回口頭弁論期日において右和解契約を取消す旨の意思表示をなした。
2 請求原因第5項中、慰藉料については昭和四四年一〇月二三日三重簡易裁判所において、右慰藉料を含め、被告は、原告に対し金五万円を支払う、原告は、その余の請求を放棄する旨の調停が成立し、原告は被告に金五万円を支払つた。
四 抗弁に対する答弁
1 抗弁第1項の強迫の事実は否認する。
2 同第2項中、被告主張の調停が成立したことは認める。
右調停成立当時本件後遺症は発覚しなかつたから調停条項のうちに本件損害賠償請求権の放棄は含まれていない。
第三証拠〔略〕
理由
一 請求原因第1項中、(五)の事故の態様を除く事実、第2項中、原告が今村病院に入院及び通院をしたこと、同第3項の和解が成立したこと、同第6項の原告が保険金三一万円を受領したことはいずれも当事者間に争いがない。
二 本件事故の態様について。
原告本人(但し、後記採用しない部分を除く。)及び被告本人の各尋問結果によれば本件事故現場は、大分市方面から犬飼方面に通じる幅員約八メートルの道路(以下幹線道路という。)と右道路の右方からこれに通じる道路との交差点からやや大分市方面寄りの幹線道路上であるが、原告は、右幹線道路の左端を自転車に乗つて大分市方面から犬飼方面に向けて進行し、被告は、原動機付自転車(排気量九〇cc)に乗つて原告の後方から原告同様幹線道路の左端を同方向に向けて時速約三五乃至三六キロメートルの速度で進行していた。被告は、右交差点手前約七〇乃至八〇メートルの位置で原告を自車前方に発見し、原告との間隔が凡そ一〇乃至一五メートルに短縮した頃、原告を追越すためハンドルを右に切つて幹線道路の中央に寄つて進行し、原告と被告との間隔が四乃至五メートルに短縮し、右交差点から二〇乃至三〇メートル手前に至つた時、原告が後方確認も、右折の合図もすることなくいきなり右折してくるのを認めてブレーキをかけたが間に合わず、自車の後部荷台付近を原告の乗車していた自転車の前輪付近に接触させて原告を幹線道路左側に転倒させ、自車を幹線道路の中央線を越え、更に反対車線を越えて右斜めに約三〇メートル走行させてガードレールに衝突させて停車したことが認められ、右認定に反する原告本人尋問の結果は直ちにこれを採用することができず他に右認定を覆えすに足る証拠はない。
右事実によれば、被告としては、追越そうとする車両が自転車であるから運転が不安定であり、場合によつては突然進路を変更し或は横断するため自車の前方に出ることも予想されるから、その動静に十分注意し、且つ速度を落して進行し、かかる事態が起こつても直ちに停車して衡突を避け、もつて事故の発生を回避するような速度と運転方法をもつて通過しなければならないのに、漫然時速三五乃至三六キロメートルの速度のまま進路を右側にとつたのみで進行したのは過失があつたというべく、右被告の過失と本件事故発生との間には相当因果関係がある。
他方、原告は、自転車に乗車したものとして、進路を変え或は道路を横断する場合、後方の安全を確認し、後続車両に進路変更或は横断する合図をするなどして警告を与えるなどし、もつて事故発生を未然に防止すべき義務があるのにこれを怠り、突然幹線道路を右横断しようとしたのは過失があつたものというべく、右過失と本件事故との間には相当因果関係があり、右原告の過失と被告の過失との割合は前記認定の諸般の事情を考えれば、原告四に対し、被告六と認めるのが相当である。
三 和解契約の取消について。
原告主張の和解契約が成立したことは当者者間に争いなきところ、被告は、被告が右和解契約を結んだのは原告らの強迫によりやむなく結んだものである旨主張する。そして被告本人尋問の結果中には、被告は、事故の当日、原告と和解契約を結んだけれども、それは、周囲の者から被告が原動機付自転車に乗車していたのであるから責任がある旨強くいわれ、強引に示談書に押印させられた旨、被告主張事実に沿う部分がある。しかし成立に争いがない甲第三号証によれば、原告と被告との間に和解契約が成立したのは、昭和四三年八月一九日であつて、その間被告は十分和解について考慮し、原告と話し合う時間があつたことが認められ、右事実に照らして考えれば、右被告尋問の結果中の被告主張事実に沿う部分も直ちにこれを採用することができず、他に右強迫を受けて示談書を作成した事実を認定するに足る証拠はない。
よつて、被告の和解契約は原告らの強迫による旨の抗弁は理由がない。
四 調停成立の抗弁について
被告主張の調停が原告と被告との間に成立したことは当事者間に争いがない。そこで、右調停に際し、原告は、原告主張の後遺症の発生を予想し、これをも含めて調停を申立てた、従つて、右調停において、本件後遺症に基づく損害賠償請求権を放棄したかについて検討する。
成立に争いのない甲第九号証の三乃至九、証人今村純夫の証言により真正に成立したものと認められる甲第四号証、証人今村純夫、同清水通生の各証言並に原告本人尋問の結果によれば原告は、本件事故による頭部外傷、右肩打撲傷、右前腕部皮下血腫、右肘擦過創、右臀部、大腿、膝部打撲傷兼擦過創、左大腿部打撲傷の傷害により、事故発生の日である昭和四三年五月二二日から同年八月二四日まで大分市所在の今村病院に入院し、その後、同年九月二八日まで同病院に通院して治療を受けた。原告は、その後、胸部苦悶感等を訴え、同市所在の吉田内科医院で冠不全、心筋障害等の診断を受けて昭和四四年七月二三日から同医院に通院し、同年八月五日入院、同年九月二〇日退院し通院治療に変つたが、そのころから両足がもつれて歩行がしにくくなり、転倒するなどしたためその原因の調査のため、同医院の医師の紹介で再び前記今村病院に同年九月二日から通院し、検査を受けたがなお原因不明であつたため精密検査の必要があり同月二二日から同病院に入院し、頭部外傷後遺症、骨変形性背椎症の診断をうけたが、足のもつれの原因は同病院の医師の精密検査の結果によつても不明であり、同年一一月一日同病院を退院し、同年一二月二七日まで通院して治療を打切つた。
原告は、右今村病院に入院中の昭和四四年一〇月、三重簡易裁判所に調停申立に及び、同月二三日調停が成立したものであるが、右調停申立書には慰藉料(後遺症分)として金三万四〇〇〇円を請求する旨記載されていた。
原告は、その後昭和四五年一月ころから訴外阿比野建設に工事現場監督として勤務するようになつたが、足腰が痛み出し、同市所在の嶋津内科医院で診察を受け、同市所在の吉田内科医院に昭和四七年一月二〇日から同年二月八日まで通院し、本態性高血圧症、硬化性心臓病、胆のう症などの診断を受け、更に同年六月一六日から同年九月二一日まで同市所在の伊藤病院に通院し、変形性腰椎症、腰椎分離症の診断のもとに治療を受けたが、それが如何なる原因によつて発生したかは不詳であつた。
原告は、なお腰痛がなおらず、昭和四七年一〇月一二日から再び前記吉田内科医院に入院して治療を受けたが、右原因が不明であつたため、同医院の医師の紹介により昭和四八年四月一〇日同市所在の清水整形外科医院で診察を受けるところとなつた。
同整形外科医院の医師は、吉田内科医院の紹介により原告の座骨神経痛の原因を整形外科の立場から検査したが、当初は、その原因を外傷によるものとは考えなかつた。しかし、清水整形外科医院の医師が原告をレントゲン撮影による検査をしたところ、原告の両下肢関節に変形が認められ、特に左の股関節に異状な変形を、また、左恥骨、座骨に変形が認められ、更に、骨盤に変形があり、右変形が通常老化現象によつて起り得る程度を越えていたため、外傷による骨折が徐々に骨盤等に作用して変形し、数年を経過して痛み、運動障害を起す骨盤及び股関節の変化にまで至つたものと同病院の医師から診断され、また、原告の右側大転子の部分に骨折の跡と思われる変形が認められた。そのため、原告は、左股関節部、右大転子部に痛みを覚え、左股関節部に相当な機能障害をのこし、歩行は跛行を伴い、異常な腰椎の運動を要求されて座骨神経痛に悪影響を与える結果になつていること、原告の大腿部周経は、右四五センチメートル、左三八・五センチメートル、下腿の周経は右三四センチメートル、左三一センチメートルと差が生じ、左股関節に屈曲と外転に運動制限があり、右股関節の屈曲がやや悪い状況下にあることがそれぞれ認められる。そして、原告は現在股関節の痛みは治まつているけれども、股関節に体重がかかる仕事をした場合股関節痛が生じるおそれがあり、股関節に無理を与える肉体労働は困難な状態にある。
右事実によれば、原告が、被告と本件調停をなした昭和四四年一〇月二三日ころには、未だ原告の前記骨盤の骨折も、右大転子の骨折も発見されず、右骨折に基づく骨盤の変形もなかつたものであつて、原告としても、右骨折等に起因する前記骨盤等の変形による運動制限、腰痛、跛行等の後遺症の発生を予想し得なかつたものと認められる。
従つて、原告が前記調停申立書に、後遺症による慰藉料を請求する旨の記載をなしていたからといつても、当時予想していなかつた本件腰部痛腰部運動制限等の後遺症の損害賠償請求権を含めて主張したものとは認められず、従つて、右請求権にまで右調停の効力が及ぶものとはいえない。
以上のとおりであるから、被告の調停成立の抗弁も理由がない。
五 後遺症の程度及び労働能力の喪失の程度
前記認定のとおり、原告には、昭和四八年四月一日はじめて発見された本件事故に因る受傷が原因となつた後遺症があり、前記骨盤等の変形、運動制限等を考えると、右後遺症の程度は自賠法施行令二条別表の第一二級七号に該当するものと認められる。そして、右後遺症の程度を労働基準局長通達の別表「労働能力喪失率表」に照らして考え、また、前記原告の症状、原告の職業を考慮すれば、右後遺症のため、原告はその労働能力を一四パーセント喪失し、その状態は、原告の生涯を通じて持続するものと認められる。
六 損害
1 休業損害 金一〇〇万円
原告本人尋問の結果によれば、前記のとおり、原告は、今村病院に昭和四四年一二月二七日まで通院したが、その後昭和四五年一月から阿比野建設に工事現場監督として勤務したところ、昭和四七年一月ころには足腰が痛むようになり、そのため勤務に耐えられなくなつて同所を退職し、同年三月八日から同年六月一七日まで大分市内の嶋津内科医院に通院し、同年六月一九日から同年一〇月一一日まで同医院に入院したことが認められる。
右事実によれば、原告は、原告主張どおり、本件後遺症により昭和四七年七月一日から休業のやむなきに至つたものと認められる。
成立に争いのない甲九号証の一、二並に原告本人尋問の結果によれば、原告は、自賠責保険に対し後遺症に関する損害につき保険金の請求をなしたところ、昭和四九年二月一八日原告の前記後遺障害は本件事故の受傷に因るものであり、その障害の程度は自賠法施行令二条別表一二級七号に該当するものと査定を受けたことが認められる。
右事実によれば、原告は、少なくとも右査定を受けた日である昭和四九年二月二八日までには前記症状が固定したもの、従つて、原告は、同日まで本件事故に因る後遺症のため休業のやむなきに至つたものと認められる。
原告本人尋問の結果によれば、本件事故発生当時、原告は、訴外錦城建設株式会社に土木課長として勤務し、月収金五万円を得ていたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。従つて、原告の本件後遺症による休業損害は次のとおりとなる。
5万円×20ケ月=100万円
但し、休業期間は、昭和47年7月1日から昭和49年2月28日までの20ケ月
2 逸失利益 金七二万一五六〇円
原告は、症状固定日である昭和四九年二月二八日当時五五歳であつたから、昭和四八年厚生省発表の簡易生命表の原告と同年齢の男子の平均余命、原告の職業を考慮すれば、なお一一年間は就労可能であつたものと認められ、従つて、原告は本件後遺症によりその一四パーセントの得べかりし利益を失つたものというべく、これを一時に請求するため、ホフマン式計算方法により年五分の中間利息を控除してその現価を求めれば、次のとおりとなる。
5万円×12×14/100×8.590=72万1560円
但し、8.590は法定利率による単利年金現価表11年の係数
3 慰藉料 金八五万円
原告の後遺症の前記程度を考えると、原告の精神的損害を慰藉するには原告主張どおり金八五万円をもつて相当とする。
七 過失相殺
前記のとおり、本件事故に関しては、原告にも前記過失があり、右原告の過失を斟酌すれば、被告は、右休業損害及び逸失利益の六割を負担すべきである。従つて、右損害のうち被告の負担すべき額は次のとおりとなる。
172万1560円×0.6=103万2936円
原告の蒙つた慰藉料についても、原告の前記過失は斟酌さるべきであり、そのうち、被告は六割を負担すべきであるから原告に対して被告の支払うべき慰藉料は次のとおりとなる。
85万円×0.6=51万円
八 損害の填補 金三一万円
原告が、本件後遺症に関する損害の填補として自賠責保険から金三一万円の保険金を受領したことは当事者間に争いがない。
九 弁護士費用 金二〇万円
本件事件の内容、認容額、訴訟の経過等を考えれば、原告が支払うべき弁護士費用中金二〇万円は本件事故と相当因果関係があり、被告が負担すべきである。
一〇 結論
よつて、原告の請求は、金一四三万二九三六円及びこれから弁護士費用を差引いた内金一二三万二九三六円に対する本件記録上明らかな被告に対する本訴状送達の翌日である昭和五〇年七月一六日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があるからこれを正当として認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 早船嘉一)